「食べかけのチェリーパイ、こぼれ出したミルクティー」雨鳴さん 「…あ、」 屋敷からチェリーパイとミルクティーを勝手に持ち出して開いた茶会の最中、 突然にが素っ頓狂な声をあげた。きょとんとした目で見やると、ディーとダム。 …の白いワンピースの上に、べったりと赤いチェリーパイの染みがついていた。 食べられずに零してしまったパイのカタマリが、地面にぼったりと落ちて蟻のエサと化した。 「…勿体ねー、拾って喰ったら駄目?」 「意地汚いよ、…」 「いくら食費かかってても、僕らソレはやらないよ…」 と、金に貪欲な双子にまでそう言われてしまったので、は渋々パイを諦める。 代わりといわんばかりに指先についたジャムを舐め、服に付いた染みを服ごと咥え込む。 最初こそ意地汚いと言っていた双子だが、徐々に、目の色が変わり始めた。 何事?と小首を傾げるの側へそっと近づき、同じような妖しい微笑みを浮かべる。 「……手伝ってあげよっか」 「そうだね、兄弟。勿体無いもんね」 「いや、手伝いはいらんよ。減る」 返事など聞きもしないで、ディーもダムも好き勝手に口を寄せる。 唾液に濡れたワンピース越しに、生暖かい舌の感触が肌を粟立たせる。 もう一方では足元に飛び散ったジャムを舐めとって、い、て。 「………。なんつーか、ベタな展開だなおい」 双子は完全に放置して、すっかり冷めてしまったミルクティーの方を味わう。 流石ブラッドが厳選した葉っぱ、冷めても美味しくいただける。 ほふうとご満悦のため息をついて目を閉じた―――のが悪かった。 妙な笑顔を浮かべたディーが、そっとミルクティーの入ったカップに手をかける。 僅かな力がカップに加わり、呆気なく中身が膝の上にぶちまけられた。 「……おいこらがきんちょ。ワンピースがパイの染みと茶の染みで斑じゃねーか」 「パイの染みはの所為だよ」 「クリーニング代は割り勘だよ」 言いながら、双子は濡れた膝に舌先を這わせる。 …ちくしょーベタじゃねーかと毒づくが、双子は意に介さない。 楽しげに肌を蹂躙して、時折くすくすと笑いを零す。 「……………」 甘い声など、漏らしてやるものか。 は黙って、空のカップを無防備なディーとダムの頭上へ叩きつけた。 ( 染みほど甘いと思うなよ! ) |