「指切りもキスもいらない、となりにいて。」 紅月さん



ずっと一緒に居られると思っていたのに、それは思い違いだったと気づかされる事がある。
それを感じるのはいつも失った後で、そんな思いを持っていた自分をひどく後悔するのだ。
永遠に一緒に居られることなんて不可能。心は流動的で留まることを知らない。
それに人生には予期せぬ出来事というものがある事を私はよく知っている。
だけど、この世界に留まる事を決めた瞬間、私はまた忘れてしまっていた。
もしかしたら無意識のうちに思考の奥へ追いやったのかもしれない。
エリオットがあんなにも私を求めてくれたから。

「なぁ、。いい加減、口きいてくれよ。」

「・・・・。」

エリオットが居なくなればがこの世界に留まった理由は一つもなくなる。
なのに、エリオットはきっとその事が分かっていないのだ。
マフィアだから危ない仕事は必要かもしれないが、自分でその危ない事をする必要はないのに。
いつも私には優しいからついつい忘れてしまうが、こうやって銃創を作って帰ってくると彼がマフィアなんだと思い出す。
その度に置いていかれる恐怖を感じている。

「もう、危険な事しないで」

きっとそんな事は無理。
けれどエリオットの怪我を見る度、願いを込めて言う言葉。

「あぁ、分かったぜ!」
そして毎度の返答。
きっと分かってない、軽い言葉。
にとってエリオットの時計が止まる事はの心臓が止まるよりも重大な事だとは全く思っていないのだ。
バカうさぎと心の中で悪態付く。

「エリオットの分かったは全然分かってない。」

、機嫌直せよ!今晩のニンジンケーキやるから!」

別に何か欲しいわけじゃないの。約束もいらない。

「ニンジンケーキなんていらない。私の気持ち、分かってくれるまで機嫌は直らないから。」

ただ体温を確かめられる位置に存在するだけで、後は何もいらないの。
ずっと私の隣に…。